- 2026/10/23 06:50 掲載
三菱電機も「車」を手放した…? デンソー・アイシン・住友電工と比較、明暗の正体
鴻海に車載を売る三菱電機、電機が「車」を手放すワケ
三菱電機は2026年10月16日、自動車機器事業を担う子会社「三菱電機モビリティ」の株式50%を、台湾の鴻海精密工業(鴻海)傘下の投資会社に約1,150億円で譲渡する契約を結んだと発表した。対象事業の企業価値は3,200億円と算定され、取引の完了は2027年10月の見込みだ。同社は2027年3月期に、約1,000億円の減損損失を計上する見通しだという。対象となる自動車機器事業全体の2026年3月期の売上高は8,756億円。一方で、三菱電機モビリティの連結営業利益は132億円にとどまる。両社が4月に検討開始を発表した際にも、ソフトウェア開発費の増加と価格競争への対応が課題として挙げられていた。三菱電機は2024年5月にアイシンと電動化製品の共同出資会社をつくることで合意したものの、同年10月に業務提携へ切り替えた経緯もある。
電機メーカーが「車」から距離を置く動きは、三菱電機が初めてではない。パナソニックは2024年、車載子会社の株式80%を米投資ファンドのアポロに譲渡し、自らは20%の保有に下がった。アポロによると、対象事業の売上高は約1.2兆円にのぼる。日立製作所も、ホンダが日立から株式を追加取得してAstemoを子会社化することになり、取得額は1,523億円とされる。
かつてパナソニックは2013年に「2018年度に自動車分野の売上高2兆円」を掲げ、日立Astemoも2021年の発足時に「2025年に売上高2兆円」を目指していた。こうした目標は、いずれも実現しないまま再編へと向かったことになる。
その空白に入り込むのが鴻海だ。同社は三菱ふそうトラック・バスと折半出資し、新バスメーカーの「FUSO BUS」を2026年後半をめどに設立する予定だ。また、三菱自動車も鴻海グループからOEM調達する新型EVの「ASX VR-e」を2026年内に豪州とニュージーランドで発売する。
では、電機が手放しつつある自動車部品の事業は、本当にもうからないのか。それとも、車に軸足を置く専業の部品メーカーにも同じ逆風が吹いているのか。トヨタ系の2社と、車以外の事業も抱える2社の最新決算から、その明暗を読み解いていく。
4社の最新決算から見えてくるのは、自動車部品事業が一律にもうからなくなったわけではないということだ。デンソー、アイシン、住友電工、三菱電機はいずれも増収を確保したものの、営業利益では2割超の減益と大幅増益に明暗が分かれた。売上高が伸びても利益が増えるとは限らず、各社の事業構造や収益力の違いが浮き彫りになっている。
背景には、EV市場の成長鈍化や価格競争の激化、ソフトウェア開発費の増大など、自動車部品メーカーが直面する厳しい経営環境がある。一方、車載以外の事業を持つ企業では、事業の組み合わせによって業績への影響も変わってくる。重要なのは、自動車関連事業の規模だけでなく、どの分野で利益を確保できるかという点だ。
今後の焦点は、次世代車向け製品の競争力を高めるとともに、開発負担やコスト上昇をいかに吸収するかにある。電機大手による相次ぐ事業再編は、自動車部品業界全体が収益構造の見直しを迫られていることを示している。
【4社決算比較】デンソー・アイシン・住友電工ら
まず目を引くのは、4社とも売上を伸ばしている点である。デンソーは前年同期比9.1%増、アイシンは7.8%増、住友電工は15.9%増、三菱電機は14.0%増と、そろって増収を確保した。ところが営業利益に目を移すと、結果は真っ二つに割れる。
デンソーは売上収益1兆9,139億円と増えた一方、営業利益は842億円で21.5%減った。通期の予想も営業利益5,000億円と、前期から9.5%の減益を見込む。前田聖司経営管理本部長は「部材費の高騰や将来の成長に向けた資金投入などが影響した」と説明している。為替の円安は追い風だったものの、減益を埋めるには至らなかったという。
アイシンも売上収益1兆3,156億円に対し、営業利益は366億円と23.6%の減益だった。決算短信では、パワートレインユニットの販売台数の減少と、中東情勢による資材価格の高騰を主な要因に挙げる。北米では関税の影響も利益を押し下げた。ただし通期では、営業利益2,350億円と2.7%の増益を見込んでいる。
これに対し、住友電工は売上高1兆3,306億円、営業利益971億円で、利益は61.0%も増えた。4社の中で最も高い伸び率である。通期の営業利益も4,500億円と、7.6%の増益を予想する。
三菱電機も売上高1兆4,971億円、営業利益1,395億円で、利益は24.6%増えた。決算説明資料によると、AI・半導体関連の需要を受けたFAシステムの調整後営業利益が212億円増え、防衛・宇宙システムも売上高が約37%伸びた。通期の予想でも、調整後営業利益6,200億円と前期から23.7%の増益を見込んでおり、強気の姿勢が目立つ。
意外なのは、手放す側の自動車機器事業そのものも、この四半期は数字が改善していた点だ。売上高は2,167億円で131億円増え、調整後営業利益も196億円と109億円増えている。円安と価格改善が効いた形で、利益率は9.1%に達した。
つまり、車への依存度が高いデンソーとアイシンは2割を超す減益となり、車以外の稼ぎ頭を持つ住友電工と三菱電機は大幅な増益を確保した。ただ、増益組の中身を細かく見ると、車の事業が利益を押し上げたわけではない。この差は何から生まれたのか。
自動車・モビリティのおすすめコンテンツ
自動車・モビリティの関連コンテンツ
PR
PR
PR