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  • 2014/04/14 12:00 掲載

“にわか将棋ファン”を拡大させる物語の力 コンピュータと人の共存は可能か?

第3回将棋電王戦 特別寄稿

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プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトが対局を行う「将棋電王戦」をきっかけにして、将棋及びコンピュータ将棋は急速にメジャー化しつつある。「にわかファン」が、将棋の奥深さを充分に理解できるようになるまでには時間がかかるものだが、「棋譜」そのものが読めなくとも、棋士の人柄や物語に触れることで、面白さを感じることができるものである。ただしそこにはブランド世界の物語を語り継ぐ、語り部としての古参ファン、すなわち「ブランドナビゲーター」とも言うべき存在が不可欠であり、彼等の無償の行為がこれを支えている。
執筆:プロジェクト進行支援家 後藤 洋平

プロジェクト進行支援家 後藤 洋平

1982年生まれ、東京大学工学部システム創成学科卒。製造業DX・人材ビジネス・IT開発・新規事業などの経験から、プロジェクト活動における「未知」という難しさを痛感。解決策を模索する中で、学生時代に学んだ設計学・サービス工学のプロジェクト活動への応用を着想した「プ譜(プロジェクト譜)」は、進行設計を計画書ではなく「譜面」として表現することで、管理に寄りすぎず、柔らかな進め方ができる手法として、静かながらも長年の支持を得ている。組織マネージャ、ITプロマネ、二児の父という三足のわらじが履ききれなくなって、2019年5月に独立。企業研修や実務支援に取り組む中で、どの業界、企業、人にも共通する悩みがあると理解し、何か一助になりたいと思いながらも試行錯誤を続けている。近年はプ譜を用いた壁打ちセッションを試行中。

「理解しがたい技術」を楽しめる、物語の力

 2012年、故米長邦雄前日本将棋連盟会長が第1回電王戦を戦った当時は、コンピュータは本当に強くなったのか、プロを超える可能性はあるのか、という問題提起がメインテーマであった。思えば当時、「プロ棋士の尊厳がコンピュータ将棋ソフトによって傷つけられるか?」というトピックはマニアックなものだった。

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2014年4月12日、第3回将棋電王戦は“プロ棋士側の1勝4敗”で幕を閉じた。

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 が、第2回は48万人の視聴者獲得、第3回は60万人超えという結果を受けて、「コンピュータ将棋が今後も進化を続ける中で、興行としてのプロ将棋は今後いかに理解されていくのか、プロ棋士の尊厳とはいかなるものになるのか」、という問題に、多くの人が関心を持ち始めている。

 思えばこの数年間で、「将棋ソフトの開発者」という言葉ほど、世間からの認知度が急上昇した言葉はあまりない。

 電王戦以前、「将棋ソフトを開発している人」に対する世間的な認知度は、極小であった。「部外者にはまったく理解できない専門用語を使って、閉鎖的なコミュニティで楽しそうに語らう人々」、悪く言えば「コンピュータおたく」「SFかぶれ」ということで、多くの人にとって理解の外にある存在だった。

 「プロ棋士」という職業に関しても、通にとっては大きな権威だったとはいえ、一般的な認知度はあまり高くなかった。例えば第1回電王戦が開催された当時は、筆者自身、「将棋といえば羽生さん」程度の認識しか持っておらず、まさかそれを職業として生活をするプロ選手が100人単位で存在するなど、考えたこともなかった。

 それが今となっては、開発者もプロ棋士も、「情報化社会の行く末を占う、最先端で超知的な先覚者」に近い扱いを受けている。

 状況を一変させたきっかけは電王戦であるが、その本質は、「物語の力」である。

 「プロ棋士も、自分と同じようにそれぞれの人生を歩んでおり、その歩みや言葉にヒントを見出すことができる」

 「将棋ソフトの開発者が、その情熱を燃やすのには理由があり、自分と専門性は違えど、高い目標に向かって研鑽を積み、挑戦をする姿には共感ができる」

 たったこれだけの補助線によって、「部外者にはまったく理解できない専門用語で語らう人々」が一変して、「自分の人生にヒントや勇気を与えてくれるヒーロー的存在」となったわけである。

 しかし、電王戦という番組単体のおかげで、人々の理解がここまで進んだのかといえば、そうではない。ビギナーをその世界の核心部へいざなう「ブランドナビゲーター」の存在こそが、この現象を支えているのである。

【次ページ】にわか将棋ファン拡大の立役者とは
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