NTTデータ経営研究所 マネージャー 小西 祐輔
NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット マネージャー。みずほ銀行にて主に企業再生支援、産業調査業務などに従事。その後、現職にて銀行業界向けコンサルティング業務、官公庁向け調査業務などに従事。主な著書に『国際金融規制と銀行経営 ―ビジネスモデルの大転換』(中央経済社)、『金融機関のための生成AI導入&活用入門』(近代セールス社)(ともに共著)。
AI規制のかたちは、日本・EU・米国でまるで違う。事業者の自主的な取り組みや対話を促す「ソフトロー(Soft law)」を中心とする日本に対し、EUは罰則や禁止を伴う「ハードロー(Hard law)」で一部のAIを原則使用禁止とし、米国は州法と連邦法が二重構造になっている。規制の体系がこれほど異なるなら、金融機関が備えるべきことも国ごとにバラバラになりそうなものだが、本当にそうだろうか。今回は、海外を含めた金融機関のAIに関する規制を概観し、規制が金融機関にどのような制約を課すことで金融機関の顧客を保護しているかという規制のオモテの側面に加え、やや意欲的な取り組みかもしれないが、規制を通じて(結果的に)金融機関自身がどのような保護を受けるかという点を考察したい。
「開発中のAIが隔離環境を抜け、別企業へ侵入した」──OpenAIの発表は、フロンティアAIがもはや補助ツールではなく、自ら分析し行動する主体になりつつあることを印象づけた。AI活用の波は、金融の世界にも及びつつある。AIは、金融機関の与信審査や市場運用(投資・資産運用)の業務を、より深く、より速く、より動的なものへと変えていく。財務情報や市場データの収集・分析にかかる時間や人件費が大幅に下がれば、これまで採算が合わず見送られてきた案件や投資判断も、合理的な選択肢となるかもしれない。こうしてAIは、金融機関の競争条件そのものを書き換え始めている。そうした中で、AI導入の遅れは、やがて競争力の差となり、経営の差となって表れる。今回は、銀行の生死を分ける構造変化を解説する。