- 2026/08/15 06:10 掲載
なぜ「SaaSの死」でもWorkday買収? AIエージェント時代に価値が上がる企業の条件
SaaS崩壊のはずが…Workday株「18%急騰」の皮肉
米投資会社シルバーレイクが米Workdayの買収に向けて協議していることが8月13日、明らかになった。ロイターが関係者の話として報じたもので、両社は数カ月にわたり協議を続けているという。なお、現時点で合意に至る保証はなく、Workdayを巡る巨大M&Aの行方はまだ流動的である。それでも市場の反応は強烈だった。報道を受け、Workday株は一時約30%高となり、終値でも約18%上昇。報道前に約433億ドル(約6兆9,700億円)だった時価総額は、約512億ドル(約8兆2,400億円)まで膨らんだ。AIが従来型ソフトウェアを代替するとの懸念から売られてきた企業が、「買収されるかもしれない」というだけで一転して評価された格好だ。
皮肉なのは、2026年にソフトウェア業界を覆ってきたのが、まさに「SaaSの死」への恐怖だった。生成AIやAIエージェントが人間の代わりにアプリを操作し、場合によっては既存アプリそのものを不要にする──。そんな見方から、Workdayを含む企業向けソフトウェア株には強い逆風が吹いていた。
では、AIによって価値を失うはずのSaaSを、なぜ巨大投資会社は買おうとするのか。Workdayの決算やAI戦略を見ると、むしろAI時代だからこそ価値を持つ「ある存在」が浮かび上がってきた。
決算で判明、Workdayは本当に「AIに食われる会社」なのか?
まず押さえたいのが、Workdayは業績が急激に崩れた企業ではないという事実だ。2026年1月期の売上高は95億5,200万ドル(約1兆5,400億円)で前期比13.1%増、サブスクリプション売上高は88億3,300万ドル(約1兆4,200億円)と14.5%増えた。営業キャッシュフローも29億3,900万ドル(約4,700億円)に達した。Workdayによれば、顧客数は世界で1万1,500社を超える。さらに2026年4月までの2027年1月期第1四半期も、売上高は前年同期比13.5%増の25億4,200万ドル(約4,100億円)、サブスクリプション売上高は14.3%増の23億5,400万ドル(約3,800億円)だった。急成長期ほどの勢いではないものの、「AIに食われて売上高が減り始めた会社」という姿とはかなり異なる。
興味深いのはAIそのものの利用状況だ。Workdayによると、自社開発のAIエージェントを1つ以上利用する顧客は4,000社を超え、第1四半期だけでRecruiting Agentが支援した採用プロセスは1,400万件。前年同期比44%増だったという。契約ユーザーも8,000万人を超える。
つまりWorkdayは人事や財務といった企業の中核データとAIを結び付け、新たな利用量を生み始めてもいるのだ。
AIエージェントがどれだけ賢くなっても、従業員情報、給与、組織、経費、承認ルールなどの正確なデータがなければ企業では仕事を完結できない。生成AIが「頭脳」になるほど、正しい業務データを保持する基幹システムの役割は、逆に重くなる可能性がある。 【次ページ】Workdayだけじゃない!巨大PEがSaaSを買う理由
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