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- 2012/06/29 掲載
IT化とグローバル化は雇用を奪うことになるのか? :篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(43)
オフショアの容易な企業とそうでない企業の違い
中央大学国際情報学部教授/九州大学名誉教授
九州大学経済学部卒業、九州大学博士(経済学)。経済企画庁調査局委嘱調査員、日本開発銀行ニューヨーク駐在員、ハーバード大学イェンチン研究所客員研究員、九州大学大学院経済学研究院教授等を経て2026年より現職。経済財政諮問会議「成長力加速プログラム・タスクフォース」委員、内閣府経済社会総合研究所主任研究官、総務省参与、社会情報学会理事・同評議員、九州大学経済学会会長などを歴任。貿易奨励会優秀賞、テレコム社会科学賞、ドコモ・モバイル・サイエンス賞などを受賞。専門は情報技術革新の経済効果分析。
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日
米国大統領の再選でカギとなる「雇用問題」
今年は世界で政治リーダーの交代が相次いでいる。ロシアではプーチン氏が大統領に復帰し、フランスでは17年ぶりに社会党の大統領が誕生した。中国共産党の指導部交代に向けた動きが活発化する中、超大国の米国では4年に1度の大統領選が行われる。現職オバマ大統領は、共和党のロムニー候補との間で「再選」を賭けた選挙戦を続けているが、大きな争点のひとつは「雇用」だ。人々にとって身近で切実な問題であるだけに、2期目を目指す現職大統領にとっては、これまでの実績が厳しく問われることになる。
4年前のリーマンショックによる世界経済の混乱は大きかったものの、その後の大胆な金融・財政政策によって、何とか最悪の危機は食い止められた。いくつかの経済指標をみる限り、米国は2009年のなかばに景気が底を打ったと判断されている。だが、失業率は依然として高水準で一進一退を続けており、必ずしも満足できる情勢にはない。ITが急速に普及し始めた1990年代以降、雇用を取り巻く環境は激しく変化したようだ。
実は、前大統領のブッシュ氏が「再選」をかけた2004年の選挙でも、また、その父であるブッシュ元大統領が「再選」をかけた1992年大統領選でも、雇用が大きな争点として取り上げられた。もっとも、いずれの時期も現在と比べると失業率は低い水準にあった。それにも関わらず、雇用が大きな問題となったのは、技術変化にともなう構造変化が生じていたからに他ならない。それを象徴するのが「ジョブレス・リカバリー(雇用なき回復)」だ。
ITエコノミーで繰り返される「雇用なき回復」
労働市場の柔軟性が高い米国では、失業率は景気の動きを敏感に映し出す重要な指標だ。流動性が高いということは、景気が悪化すると、企業がすぐに人を減らしを始めるため、失業率が悪化する反面、景気が良くなると、逆に迅速に人材採用を始めるため、失業率が急速に改善に向かうことを意味する。先ほどみた図表1のグラフでは、景気の谷をあらわす線が示されているが、だいたいどの時期をみても、谷を過ぎて景気が回復し始めると、およそ1、2カ月で失業率が低下し始めている。少なくとも、悪化するようなことはほとんどみられない。
ところが、1990年代序盤と2000年代序盤は様相が異なっている。さまざまな経済指標をみると景気が回復しているのに、これらの時期は失業率が悪化を続けているのだ。1990年代はIT投資で米国経済が再生したが、景気の回復初期は1年以上も失業率が悪化、その後も谷の水準の失業率に戻るのにさらに1年以上かかり、合計で2年半を要した。連載の第32回でみたように、IT投資の盛り上がりとともに、リストラ、リエンジニア、ダウンサイジングなどの企業改革が進められ、雇用を見直す動きが続いたからだ。
結局、当時共和党の現職大統領だったブッシュ氏(父)は、1992年の大統領選に敗れ、民主党のクリントン政権が誕生した。皮肉な巡りあわせだが、2004年の大統領選では、息子のブッシュ前大統領が同じ課題に直面した。
そのときクローズアップされたのが、情報化とグローバル化が交叉する「オフショアリング(オフショア・アウトソーシング)」による雇用の空洞化だ。米国企業がコンピュータ・プログラムの作成や電話によるテクニカル・サポートなどの技術系サービス業務を、低賃金ながら教育水準が高く英語も流暢な人材を求めてインドやフィリピンに移転する動きが目につくようになった。ニュー・ジャージー州では、州政府からの発注業務を行う企業がオフショア・アウトソースを行うことを禁止する法案が提出されたとさえ報じられている(注1)。
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