- 2026/08/15 07:10 掲載
顧客の「欲しい」をうのみにしない…キーエンスで磨いた“言葉の裏”を探る営業術
1991年、兵庫生まれ。慶應義塾大学大学院卒。大学院卒業後、キーエンスに新卒入社。研修時は部内同期でトップクラスの成績(基礎テスト1位、技術テスト3位)を収めるも、配属後は一転して成果が出ず、2年目には最低評価を受け、どん底を経験する。そこからプライドを捨て、電話や質問の1つひとつを徹底的に研究。「凡人がいかにして成果を出すか」という再現性にこだわり抜いた結果、同下期に新商品販売ランキングで全国トップ10に2度入賞。才能に頼らず、泥くさい工夫ではい上がるための営業メソッドを確立。
Xアカウント:https://x.com/asahi_sales
前編はこちら(この記事は中編です)
「欲しいものを売らない」という逆説的な思考法
キーエンスで学んだ数ある思考法の中で、今もなお私の営業活動の根幹を成し、あらゆるビジネスパーソンに共通して必要だと確信している1つの逆説的な教えがあります。それは、「顧客が欲しいものを売ってはいけない」というものです。現在では多くの書籍やSNSでも謳われていることもあり、営業経験者であれば一度は聞いたことがあるフレーズかもしれません。
「顕在ニーズ(顧客が自覚している欲しいもの)ではなく、潜在ニーズ(顧客自身も気づいていない本質的な課題)を狙え」という、あの有名なテーゼです。
しかし、その本質を本当に理解し、日々の営業活動に「仕組み」として組み込み、実践できている人は驚くほど少ないのが現実ではないでしょうか。
誰にでも代替可能な「御用聞き」になっていないか
たとえば、目の前の顧客から「とにかくパワーのある電動ドリルが欲しいんだ!」という明確なリクエスト(顕在ニーズ)を受けたとします。その瞬間、「ありがとうございます!それでしたら弊社の最新モデル、パワー重視の電動ドリルA~Cがこちらです!まず電動ドリルAの機能についてですが……」と、喜々としてカタログを広げてしまっているあなたは残念ながら注意が必要です。それは営業という付加価値の高い仕事ではなく、誰にでも代替可能な「御用聞き」になってしまっているからです。
もちろん、顧客の要望通りの製品を迅速に提供することは重要です。しかし、そのレベルで満足しているとあなたは「A社よりB社のほうが1,000円安いからB社で買う」という、熾烈な価格競争の土俵から永遠に降りることはできません。優れた営業は顧客の「欲しい」という言葉を、ゴールではなくスタート地点として捉えます。
顧客は「モノ」を買いにきているのではない
なぜ、「欲しいもの」をそのまま売ってはいけないのか。それは、顧客は「モノ(製品)」そのものを買いにきているのではないからです。彼らが本当に求めているのは、そのモノを使って自らの課題を解決できた末に手に入る、理想の「体験」「未来」なのです。有名な言葉に「顧客が欲しいのはドリルではなく、穴である」というものがあります。キーエンス流の思考はこれをさらに深掘りします。
──穴が欲しいのではなく、棚を取り付けたいのかもしれない。
「なぜ、棚を取り付けたいのか?」
──散らかった部屋を整理し、快適な生活空間という「未来」が欲しいのかもしれない。
あなたの仕事はドリルを売ることではありません。顧客が望む「未来」を正確に定義し、そこへ到達するための最短・最適なソリューションを提供することなのです。
【次ページ】顧客の「本当の目的」を引き出す5つの深掘り
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